こんにちは。熊本在住のりーです。

桜も散り始め、若緑色の芽が出始めていますね。この時期は何かが始まろうとする、一年で一番好きな季節です。

私はこれまで、地域に大きなインパクトを与えうるTSMCの進出がもたらすもの、熊本大学附属小中学校に新設された国際クラスの意義、あるいは地元の銀行が大学発ベンチャーの支援に乗り出すことの意味など、これからの地域を形作るであろう様々な動きを取材してきました。

これらの取材を通して私が一貫して抱いているのは、「地域を創るのは、結局『人』である」という考え方です。

そして、人を育て、地域をより良くしていくためには、「教育」が不可欠だと考えてきました。しかし、教育は時として人の思想に関わるデリケートな領域であり、そのアプローチは非常に慎重さが求められます。


画一的な方法が通用するわけでもなく、一筋縄ではいかない難しさを感じていました。

そんな中、私が考えていた「教育」とは少し異なるアプローチで、しかし確実に地域と人にポジティブな影響を与えようとしている若者に出会いました。

宮津航一さんです。彼は自らの名前、本名で活動する、現役の学生起業家でもあります。


✨️九州NOW:”特別”じゃない、”普通”じゃない、「子ども食堂」とは

d学生起業家の宮津航一さん

宮津さんは、熊本市にある慈恵病院が設置した「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)に、最初に預けられた方です。慈恵病院でゆりかごが始まった当初、様々な議論を呼びました。メディアでも取り上げられたことを覚えている方もいるかもしれません。

社会的な関心を集めたその背景を持つ宮津さんですが、今回お会いして感じたのは、その事実を静かに受け止め、未来へつなげようとする強い意志でした。


「かわいそう」は優しさか


ご自身の経験を通して、社会とのつながり、人の温かさ、そして時にはその逆も知りながら、深く考え続けてこられた宮津さん。印象的だったのは、里親家庭で育つ中で経験されたという、ある出来事です。

当時、小学生だった宮津さんはやんちゃな同級生とトラブルになり、相手の親御さんから里親のお母さんへ電話があったそうです。

電話口でお母さんは静かに話を聞いていましたが、突然、語気を強めて電話を叩き切るように言ったといいます。「うちの子は、そんな子じゃありません!」と。

相手から「(航一くんは)親がいないからでしょう」といった言葉を投げかけられた瞬間、自分のために本気で怒ってくれたお母さんの姿が、何よりも嬉しかったと宮津さんは話してくれました。

宮津さんを受け入れた里親家庭が、温かい家庭であったことがうかがえるエピソードです。

さらに、宮津さんは力強くこう言いました。「私は一度も自分をかわいそうだと思ったことはありません」。

その言葉を聞いた私はハッとさせられました。誰もがよい里親に恵まれるとは限りません。だからある意味で、彼はとても恵まれた特殊な状態、ラッキーだったと言えます。

けれども、もしかしたら、私たちが誰かに対して「かわいそう」と感じること、それ自体が、相手を対等な存在として見ていない、ある種の偏見や蔑みになってしまうのではないか、と。


「かわいそうな子」のレッテルを剥がす


こうした経験の一つひとつが、宮津さんの他者への深い共感と、「自分にできることは何か」を問い続ける姿勢につながっているのでしょう。

言葉の端々から、経験に裏打ちされた優しさと強さが伝わってきました。その視線は今、地域の子どもたち、特に「子ども食堂」という場所の可能性に向けられています。

「子ども食堂に対する世間の視線には『特別な支援が必要な子が利用する場所』『かわいそうな境遇の子が行くところ』といった、限定的な、時にはネガティブな偏見があるように感じます。でも、それは本来の姿ではないはずなんです。経済的な理由だけでなく、孤食を防いだり、多様な大人と子ども出会ったり。誰もが、どんな理由であれ、ふらっと気軽に立ち寄れて、温かいご飯を囲みながら、自然と地域の人と繋がれる。そんな、地域の”みんなの居場所”にしたいんです。」

宮津さんは、穏やかながらも力強くそう語ります。その言葉の背景には、ご自身の経験からくる「どんな環境に生まれ育っても、すべての子どもたちが『自分はここに居ていいんだ』と心から安心して過ごせる、温かい居場所が必要だ」という、切実で普遍的な願いがありました。

偏見は、時に人をその場所から遠ざけてしまいます。だからこそ、その壁を取り払い、誰もがアクセスしやすい開かれた場所にしたい、という思いが強いのです。


希望の連鎖が未来を変える


子どもは地域の宝であり、未来そのものです。宮津さんのように、過去の経験を力に変え、未来を担う子どもたちのために具体的な行動を起こす人がいること。

そして、その思いに共感し、活動を支えようとする地域の人々がいること。それらが相互に作用し合うことこそが、真に温かく、誰もが包摂されるコミュニティを育むのだと、私は強く感じました。

宮津さんのこれまでの歩み、子ども食堂にかける情熱、そしてご自身の経験から得た社会へのメッセージについて、さらに詳しく知りたい方は、ぜひWebメディアCareCareの記事をご覧ください。

この記事が、地域と子どもたちの未来について、皆で考え、行動するきっかけとなれば、これほど嬉しいことはありません。


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💪リデザインのためのアクション

  • 知る: 「〇〇市(お住まいの地域名) 子ども食堂」で検索し、場所や開催日時、活動内容を具体的に調べてみる。自治体や社会福祉協議会のサイトも参考に。
  • 考える: ニュースや日常で誰かを「かわいそう」「普通じゃない」と感じた時、なぜそう思うのか一度立ち止まる。自分の「普通」の基準はどこから来ているか考えてみる。
  • つながる: いつもの挨拶に「いい天気ですね」など一言加えてみる。地域の清掃活動や小さなお祭りなど、気軽に参加できるイベントに顔を出してみる。


🎯次回予告

次週はおすすめの本を紹介するBookPick。マンガも立派な読書です。来週は、私が新刊が出るとついつい買ってしまう、大好きなマンガを紹介したいと思います。お楽しみに!

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